[書評]ゼロからはじめるシーケンス制御

  • 「シーケンス制御を勉強したいけど、何から始めればいいかわからない…」
  • 「制御設計の仕事に配属されたけど、OJTで基礎的な知識をみっちり教えてくれる感じでもない…」
  • 「基礎知識を書籍で勉強したいけど、どの本で勉強するのが最適なの??」

こんな悩みを抱えてる方、多いのではないでしょうか。私もその一人でした。

シーケンス制御のおすすめの本を、詳細に解説してくれるネット記事は少なかったため、
「どの本を読んだらよいのだろう?」と戸惑う日々。

「だったら、私が書籍を読んで記事を書こう!」
ということで、読んだ書籍の書評を書いています。
PLC おすすめ本 初心者向け4選【2025年最新】制御エンジニア厳選

その中で、本記事は、「ゼロからはじめるシーケンス制御」について、
中身はもちろん、おすすめの対象者や業務に役立て方まで解説します。

結論:この本を買うべき方

PLCの選定から機器接続、立ち上げまで一貫して携わる方

第一編では、PLCの構造・入出力機器の接続・PLCの選定と立ち上げまで、詳細に解説。

特に、第5章のPLC機種選定のチェック項目の図は秀逸
要求仕様と制御対象機器の観点から10項目を詳細にリストアップ。
この1ページだけでも購入価値十分あり。

PLCのプログラム手法を学びたい方

「こういう情報が欲しかったんだよ!」

私が本書を立ち読みして購入した最大の理由
「第3編第1章 ラダー図のための5種類のプログラミング手法」

これは全世界のPLC制御設計技術者の必修科目としたいくらい。
制御対象のモデル化→ラダー図という制御手法を、なんと5つも紹介してくれる。

現場で使える実践的な知識を定着させたい方

各章の最後に演習問題あり。学んだ知識の確認と定着に役立つこと間違いなし。

書籍の基本情報

項目内容
書籍名ゼロからはじめるシーケンス制御
著者熊谷英樹
出版社日刊工業新聞社
価格\2,420
ページ数155ページ
発行年2001年初版1刷発行
対象レベル完全初心者~初心者

本書が「良書」である理由

実務で使えるプログラミング手法が学べる

一般的なラダープログラムの記述ルールを記載する媒体(本やネット記事)は少ない

本書の第3編では、ラダー図の作成テクニックを紹介しています。

高級言語(PythonやC++)では、コーディングルールや開発手法が頻繁に議論され、それに関する専門書まで存在するにもかかわらず、PLC制御の世界ではそのような内容を記述する書籍が少ないと感じています。

しかし、本書では、制御対象モデルおよび動作順序の要求仕様から、モデル化(後述)→プログラム作成の流れを、なんと5つの異なるアプローチで紹介しています。

異なるモデル化などのアプローチからプログラミングしていため、
5種類すべてのコードが異なることが非常に興味深いですね!

モデル化について触れている数少ない良書

「モデル化」とは、簡単化・抽象化する作業です。

システム開発においては、要求仕様をフローチャートやシーケンス図などでモデル化する作業です。

SE(システムエンジニア)の世界においては、要求された仕様がはっきりした後で、プログラム作成を開始する前段階として、モデル化は実施されます。

しかし、制御に関する書籍では、開発の重要工程であるモデル化に触れている書籍が少ないです。
職場でも、すぐにプログラム作業から開始してしまう方が少なくないです。

モデル化のメリットは

  • 複雑な問題を理解しやすくする
  • 開発者間でのコミュニケーションを容易にする
  • システムの設計や構造を明確にする
  • 問題点や改善点を発見しやすくする

PLC制御技術者は”SE”です。
是非、SEの常識の一端であるモデル化を本書で触れてみてはいかがでしょうか。

本書では、フローチャート、タイムチャート、状態遷移図などが登場します。

保守性の高いプログラミングを実現するために必須の知識

上述したプログラミング手法やモデル化など、一定の記述ルールを、個人で、またチームで共有することで、可読性・保守性の高いプログラミングを実現することが可能になります。

個人的な悩みとして、ラダー図は上から下までプログラムが冗長にならび、非常に読みにくくなる傾向があるなと感じていました。

ですが、本書で学んだ、モデル化や記述手法を活用することで、より読みやすいプログラミングを記述することができ始めていると実感しています。

PLCの選定から接続→立ち上げまでに必要な知識を徹底網羅

第一編では、PLCの構造・入出力機器の接続・PLCの選定と立ち上げまで、詳細に解説されています。

特に、第5章のPLC機種選定のチェック項目の図は秀逸です。
要求仕様と制御対象機器の観点から10項目を詳細にリストアップされています。

加えて、PLC選定後の立ち上げ手順を、なんと15の手順にわたり詳細に記載。
配線や接続、起動からプログラミング、動作確認までカバー。
開発業務の全体像が把握でき、制御設計に興味がある大学生がいたら、ピンポイントでこの章をおすすめします。

制御設計の実務の流れを忠実に再現している

実際、私の経験上以下のような手順で業務を進行します。

  1. 要件定義=ハードとソフトウエアを含めたシステムに要求される機能の明示
  2. 外部仕様設計=ハード構成や入出力機器など
  3. 内部仕様設計=モデル化や制御手順の明確化など
  4. 詳細設計=プログラミング

世の中の制御関連の書籍では4のラダー図の書き方ばかりで、1~3の工程をあまり書いている書籍が少ないと感じています。

対して、本書では、制御対象を実体配線図などで明確に定義したうえで、「どのような動作が要求されているか」→「要求からモデル化」→「プログラミング」の流れを、端的に記載しています。

上記のような、C++やPythonなどの高級言語を使ったソフトウエア開発技法としては当たり前の開発手法が、業界全体として抜け落ちているのではないかと危惧しています。この本を読んで、ソフトウエア開発の常識をかじってみてはいかがでしょうか。まわりの制御設計者と差をつけられることでしょう。

本書の構成詳細

※著作権の関係上、すべての目次を書けませんので、大まかな章立てまでの表示としています。

第1編:ハードウエアの基礎・・・・P1~83

第1章:導入章

リレーの構造や接点の標記方法、簡単な制御回路を学ぶ導入章である。

第2章:PLCとプログラミング基礎

前半部

  • 構造の視点でのPLCの種類:パッケージタイプなど代表的な3種類を紹介
  • PLCの内部構造
  • 入出力の端子とリレー

後半部

  • PLCプログラミングの基礎
  • タイマ・カウンタ

第3章:入力機器の接続の方法

  • 有・無接点入力機器の接続
  • IC出力型信号の接続方法
  • アナログ計測タイプの入力機器の取り扱い
筆者の実体験

以前インバータを使った配線をしたときに、動作しないことが。
「配線は間違っていないのに、、」と困っているなか、先輩から「シンク・ソースタイプ」の設定が間違っているとご指摘が。こうちょっとした知識不足が20分のロスに。
この本を読んたとき、「もう少し早くこの本読んでればなー」と感じましたね。

第4章:出力機器の接続の方法

  • 出力ユニットの種類と接続方法
  • ソレノイドバルブと空気圧シリンダの接続
  • モータの接続とラダー図
  • 実例をもとにしたPLCの配線
いいね!ポイント

システム構成と動作順序の要求仕様から、実体配線図やシステム回路図を含むハードウエアや、ラダー図のソフトウェアまで詳細に記載されている。開発業務のお手本ともいえるアウトプットは必見です。

第5章:PLC選定と立ち上げ手順

前述しましたが、PLC機種選定のチェック項目の図は秀逸
要求仕様と制御対象機器の観点から、選定のための10のチェック項目を詳細にリストアップしています。
この1ページだけでも購入価値十分あり。

後半では、PLC選定後の立ち上げ手順を、なんと15の手順にわたり詳細に記載。
配線や接続、起動からプログラミング、動作確認までカバー。
開発業務の全体像が把握でき、制御設計に興味がある大学生がいたら、ピンポイントでこの章をおすすめします。

第2編:プログラミングの基礎・・・P85~120

第1章:表記方法と基礎

ラダー図が中心ですが、二―モニクでのプログラミング表現も記載。

  • ラダープログラムの演算順序
  • ラダー図の基礎的な回路

個人的収穫は、「リフレッシュ方式とダイレクト方式」。動作に大きく関わるところなので知ることができためになります。

第2章:二つの視点からのラダー図の読み方

一つ目の視点は「電気回路」。

ラダー図はもともとハード部品であるリレーを使った電気回路ですので、同じ考え方です。

二つめの視点は「論理演算回路」。

ラダー図の演算条件が①~⑮まで言語化されており、それをもとに簡単な5つのラダー図や自己保持回路を読み解いています。

非常に興味深く、もしかしたら設計で使えるのでは?と個人的に感じた内容です。

第3編:ラダー図の作成テクニック

第1章:5つのプログラミング手法の解説

同一の制御対象モデルを使用し、以下の5つのプログラミング手法を使ったラダー図の作成方法が紹介されている。

  • タイミングチャート
  • タイミングテーブル
  • フローチャート
  • 行程歩進
  • 状態遷移図

ラダー図のプログラミングルールを学びたい方必見です。

第2章:フローチャートと状態遷移方式のプログラミング

PLCで良く取り扱われる順序制御を視覚的にわかりやすく表現→設計する方法を解説。

状態遷移図→フローチャート→自己保持回路を利用したラダー図という設計手法が紹介されている。

これを利用することで、抜け漏れのない、誰が見てもわかりやすい保守性の高いプログラミングが誰でも今日からできること間違いなしです。

まとめ

本記事では、書籍「ゼロからはじめるシーケンス制御」について、読むべき対象者およびおすすめポイントを解説しました。

  • PLCの選定から機器接続、立ち上げまで一貫して携わる方
  • PLCのプログラム手法を学びたい方
  • 現場で使える実践的な知識を定着させたい方

是非、本書を読んで、周りのエンジニアと差をつけましょう!

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